「車を運転すること」と、
「ガソリンスタンドに寄ること」は、
同時に行うことができません。
どちらか一方だけになります。
「車を運転する」とき、
走りながら、
「ガソリンスタンドに寄る」ことを
できません。
「ガソリンスタンドに寄る」とき、
給油しながら、
車を走らせることを
できません。
「ガソリンスタンドに寄ること」で、
ガソリンを給油できます。
ガソリンを十分に給油できれば、
「車を運転すること」ができます。
普通、
このように切り離されています。
算数や数学の計算は、
実に面白いことに、
同時に
2つのことを行うことができます。
一定の時間続く集中力や
最後まで終わらせる意志の力を
育てることと、
8+6 のようなたし算を
数唱を指で数えて
50問100問と計算することが、
同時に行われます。
計算している子どもは、
8+6 を、
「はち」としてから、
「く、じゅう、じゅういち、じゅうに、じゅうさん、じゅうし」と、
数唱を指で6回数えて、
答え14を計算していると思っています。
計算だけをしていると
思っています。
実は、
集中力を伸ばすことも、
最後まで終わらせる意志の力も、
同時に育てているのですが、
子どもは、
そのようなことも育てていると
少しも思ってはいません。
3+6 の計算で、
集中が切れて止まっていたら、
集中を戻す手伝いをします。
3+6 を離れて
計算をしていないとき、
集中力や意志の力が
育っているのではありません。
集中が切れて、
3+6 の計算から離れると。
計算が止まるだけではありません。
集中力や意志の力が育つことも
同時に止まります。
だから、
切れている集中を
手伝って戻します。
子どもの耳元で、
「さん」とヒソヒソ声で言ってから、
「し、ご、ろく、しち、はち、く」と、
子どもに見えるように、
こちらの指で6回数えて、
答え9を出します。
こうすると、
子どもは、
答え9を書いて、
3+6=9 とします。
答え9を書いたとき、
計算することに戻ります。
集中力を伸ばすことと、
最後まで終わらせる意志の力を、
育てる手助けをしていると
こちらは意識しています。
子どもは、
計算を手伝ってもらったと
思っています。
算数や数学の計算問題は、
車を運転し続けながら
ガソリンスタンドに寄っているような
奇妙なことを
同時にできてしまいます。