「すぐに覚える」と心の中で決めて、九九を指導します。

2×1=2にいちがに2×2=4ににんがし2×3=6にさんがろく2×4=8にしがはち

2×5=10にごじゅう2×6=12にろくじゅうに2×7=14にしちじゅうし2×8=16にはちじゅうろく2×9=18にくじゅうはち と、

振り仮名を付けた九九のカードを、

「にいちがに」、「ににんがし」、「にさんがろく」、「にしがはち」、

「にごじゅう」、「にろくじゅうに」、「にしちじゅうし」、「にはちじゅうろく」、

「にくじゅうはち」と、

声に出して読ませます。

 

読みにくいところ、

読めないところの読み方を教えます。

 

「どこ?」、

「ここ?」、

「ここは、『にしちじゅうし』だよ」と、

このようにしません。

 

「にしちじゅうし」のように、

読んでみせます。

 

読み方の見本です。

ただ読むだけです。

 

何回か読ませて、

楽にスラスラ読めるようにします。

 

そうしたらいきなり、

「見ないで言ってごらん」と促します。

 

数回読んだだけですが、

少しは覚えています。

 

覚えている2の段の九九を

子どもは思い出しながら、

自信なさそうに言います。

 

思い出せずに止まったら、

こちらが言ってしまいます。

 

「にしが(2×4)……」でしたら、

「はち(8)」と言います。

 

するとすぐにまねして、

「にしがはち」と言ってくれます。

 

再び

九九のカードを見て音読させます。

 

3~4回読んだころまた、

「見ないで言ってごらん」と促します。

 

1回目よりも

覚えている九九が増えます。

 

思い出せずに止まったら、

こちらが言います。

 

覚えていない九九は、

考えても出てきません。

 

今から覚えればいいのです。

 

「音読→見ないで言う」を繰り返します。

 

すると、

見ないで言えるようになります。

 

2の段を覚える各ステップを、

体験させることで教えます。

 

2の段を覚えたときに、

九九の覚え方も分かります。

 

翌日、

「2の段、言って……」で

言わせます。

 

言えなければ、

九九のカードを見て、

2~3回読ませます。

 

その後、

見ないで言わせます。

 

「音読→見ないで言う」を、

見ないで言えるようになるまで、

繰り返させます。

 

「昨日、言えたでしょ!」や、

「忘れたの!」としません。

 

九九の覚え方を

ハッキリとさせるチャンスです。

 

今日から九九を覚えると思って、

覚える練習をさせるだけです。

 

昨日よりも

楽に覚えることができます。

 

昨日、

繰り返し練習した効果です。

 

次に3の段です。

3×1=3さんいちがさん3×2=6さんにがろく3×3=9さざんがく3×4=12さんしじゅうに

3×5=15さんごじゅうご3×6=18さぶろくじゅうはち3×7=21さんしちにじゅういち3×8=24さんぱにじゅうし3×9=27さんくにじゅうしち  と

振り仮名を付けた九九のカードを読ませます。

 

「さんいちがさん」、「さんにがろく」、「さざんがく」、「さんしじゅうに」、

「さんごじゅうご」、「さぶろくじゅうはち」、「さんしちにじゅういち」、

「さんぱにじゅうし」、「さんくにじゅうしち」と

声に出して読ませます。

 

2の段のように、

見ないで言えるようになるまで

練習させます。

 

「何回か読ませます」→

「見ないで言います」→

「思い出せずに言えない九九は、こちらが言います」→

「読ませます」→……。

 

「さんし(3×4)……」で止まったら、

「じゅうに(12)」と言うだけの教え方です。

 

「さんし(3×4)……」で2度目に止っても、

1度目に止まったときのように、

「じゅうに(12)」と教えます。

 

同じ九九で思い出せずに、

何回止まっても、

いつも今が1度目だと思って教えます。

 

これだけのことです。

 

九九の覚え方を、

九九を覚えながら教えています。

 

だから、

「覚えなさい」と言いません。

 

覚えなさいと言わずに、

覚え方そのものを教えます。

 

子どもが同じ九九を思い出せずに、

何回止まっても、

こちらはいつも同じように淡々と教えます。

 

子どもはすぐに、

こちらの態度をまねします。

 

イライラすることなく、

思い出せない九九を覚えようとします。

 

ちょっとしたコツがあります。

 

こちらは、

この子は

「必ず覚える」、

あるいは「すぐ覚える」と

心の中で決めます。

 

だから、

同じ九九で思い出せずに、

何回止まっても、

淡々と穏やかに

教えることができます。

 

子どもはまねして

穏やかに練習します。

 

だから、

九九をすぐに覚えます。

 

同じ九九を

何回も思い出せない子に、

「覚えが悪いな……」や、

「何をもたもたしているのだろう……」と、

こちらが心の中で思ったとします。

 

そして、

子どもがもたもたしていることに、

こちらはイライラします。

 

すると、

こちらのイライラが

子どもに伝わります。

 

子どももイライラし始めます。

 

こちらのイライラは、

九九を覚えられない子どもへのイライラです。

 

子どものイライラは、

自分が九九を覚えられないことにではなくて、

こちらのイライラに反応してのイライラです。

 

こうなると、子どもは

九九を覚えることに

集中できなくなります。

 

覚えが悪くなります。

 

目の前の子どもがもたもたしていても、

九九のカードを見ないで言うことが

なかなかできなくても、

こちらは、この子は

「必ず覚える」、

あるいは「すぐ覚える」と

心の中で決めることができます。

 

心の中で決めることを

勝手に選べるからです。

 

目の前のもたもたしている子どもと、

大きく違った未来の子どもを、

心の中に決めることができます。

 

暗示ではありません。

 

まだ実現されていない、

頭の中にある現実です。

 

演奏前の楽譜や、

建築前の設計図と同じです。

 

九九をすぐ覚える子は、

実現されていないだけの

現実です。

 

このようにして、

2の段から9の段までの九九を、

見ないで言えるように育てます。

 

参照:

蔵一二三、「計算の教えない教え方 かけ算わり算」(2018)。

アマゾン。

計算の教えない教え方 かけ算わり算―たかが計算 されど算数の根っこ そして人育て