たし算の答えを浮かべる力をつかむことは、大きな試練です。

暗算のたし算のゴールは

ハッキリしています。

 

3+8 を見ただけで

答え11を浮かべる力を

持つことです。

 

この力を持っている大人は、

それぞれが苦労して、

この力をつかみ取っています。

 

9+6 を見たら答え15が浮かぶ今、

こうなるまでの苦労を忘れています。

 

答えが浮かぶようになるまでは、

指で数えていました。

 

9+6 の9を、「く」と読んで、

「じゅう、じゅういち、じゅうに、じゅうさん、じゅうし、じゅうご」と、

指で6回数えて、

答え15を出しました。

 

指で数えなくても、

答えが浮かぶように

すぐになりませんから、

「いつまで指を使っているの!」と

叱られました。

 

それでも指で数えないと、

答えが出ませんから、

指で数え続けました。

 

指で数え続けていると、

5+4 のようなたし算の答え9が、

指で数える前に出るようになりました。

 

そして、

少しずつ答えの浮かぶ問題が増えて、

いつの間にか指を使わなくなりました。

 

このような大変な努力をして、

3+8 を見ただけで

答え11を浮かべる力を

つかんでいます。

 

そうだったのですが、

自分が大変な苦労をしたことを

不思議とスッカリ忘れています。

 

3+8 を見ただけで

答え11を浮かべる力を

つかむまでの大変さを忘れているだけです。

 

大変なことは大変なのです。

 

しかも、

今も大変なままです。

 

3+8 を見ただけで

答え11を浮かべる力を、

短期間で楽につかめる教え方など

発明も発見もされていません。

 

今の子も、

6+7 の6を「ろく」と読んで、

「しち、はち、く、じゅう、じゅういち、じゅうに、じゅうさん」と、

指で7回数えて、

答え13を出します。

 

指で数える計算を繰り返すことで、

少しずつ答えが浮かぶ問題がでてきます。

 

こうして、

3+8 を見ただけで

答え11を浮かべる力を

つかむしかありません。

 

目の前の子は、

指で数えて答えを出しています。

 

少し未来のこの子を想像すると、

少しずつ答えが浮かぶ問題が増えて、

もう少し先の未来には、

指を使わなくなっています。

 

指で数えて答えを出すことができれば、

目の前の子はこうなりますから、

大変な努力をしているこの子を

優しいまなざしで見るようにします。

 

参照:

蔵一二三、「計算の教えない教え方 たし算ひき算」(2018)。

アマゾン。

計算の教えない教え方 たし算ひき算―たかが計算 されど算数の根っこ そして人育て