「見てまねする学び」は、
計算問題の答えの出し方を学びます。
見ている対象は、
計算問題です。
「教える学び」は、
自分の答えの出し方を、
誰かに教えることで、
答えの出し方を学びます。
見ている対象は、
自分自身になっています。
計算問題の答えを出している自分自身を見て、
自分の答えの出し方を、
誰かに教えます。
答えを出している自分を見ているから、
自分の答えの出し方を、
誰かに教えることができます。
「見てまねする学び」も、
「教える学び」も、
少しの違いだろうと
思われることが多いのですが、
学ぶときに見ている対象が、
「計算問題」と、
「答えを出している自分」と、
大きく違います。
自分の答えの出し方を、
誰かに説明するとき、
見ている対象は、
自分自身ですが、
その自分は、
答えを出そうとしているのですから、
計算問題を見ています。
つまり、
計算問題を見て、
答えを出そうとしている自分自身を見て、
自分の答えの出し方を、
誰かに説明しています。
「見てまねする学び」では、
ハッキリと区別できないことがあります。
その一つが、
不等式の不等号の向きの変化です。
例えば、
不等式 3x>4x+5 です。
普通は、
x を左に集めますから、
不等号 > の右の 4x を、
左に移します。
「左に移す」計算はありませんから、
右の 4x を消すために、
不等号 > の左右に、
同じ -4x を足します。
すると、
3x-4x>4x+5-4x です。
不等号 > の右は、
4x+5-4x=
4x-4x+5=
+5 になり、
不等号 > の右から、
4x が消えます。
結果だけを利用すれば、
3x>4x+5 の不等号 > の右の 4x を、
左に、符号を変えて移して(移項)、
3x-4x>+5 です。
不等号 > の向きは変わりません。
あるいは、
不等式 -x<5 で、
普通は、-x ではなくて、
- を取って、
x だけにします。
「- を取る」計算はありませんから、
不等号 > の左右を、
同じ -1 で割ります。
すると、
不等号 > の向きが変わって、
x>-5 です。
まとめると、
不等式 3x>4x+5 の移項、
3x-4x>+5 では、
不等号 > の向きが変わりません。
不等式 -x<5 の、
左右を同じマイナスの数 -1 で割ると、
x>-5 のように、
不等号 < の向きが、
逆向きの > に変わります。
区別しにくい規則です。
ゴチャゴチャになります。
実例ですが、
3x>4x+5
3x-4x<5
-x<5
x<-5 のような解き方をします。
この子は、
「見てまねする学び」では、
不等号 < の向きを変える規則を
学べないことになります。
だから、
「教える学び」に変えることで、
この不等式を解いている自分自身を見て、
自分の解き方を、
こちらに教えさせます。
1行目 3x>4x+5 を示して、
「これを」、
2行目 3x-4x<5 を示して、
「これ、どうやったの?」です。
この子は、
こちらに、自分の解き方を教えるために、
1行目から、
2行目を解いている自分自身を見ます。
そして、
1行目 3x>4x+5 の 4x を示して、
「これを」、
2行目の 3x-4x<5 の -4x を示して、
「ここに動かす」のような感じで、
こちらに教えてくれます。
1行目から、
2行目を解いている自分自身を見ていますが、
不等号 > の向きを、
逆向き < に変えた部分を見落としています。
ここを見てほしくて、
この子にさらに聞きます。
1行目の 3x>4x+5 の > を示して、
「これが」、
2行目の 3x-4x<5 の < を示して、
「これ、どうやったの?」です。
この子は、
解いている自分自身の
見落としている部分を見て、
「4x を示して、これを、
-4x を示して、反対側に動かしたから」と、
教えてくれます。
実は子ども自身、
不等号の向きを変える規則に、
自分が曖昧なままだと知っています。
だから聞きます。
「向きが変わるのは、
どういうとき?」です。
これで子どもの学びが深くなり、
「マイナスで割ったときだから、
ここ、向きを変えない」と教えてくれます。
(基本 -712)、(分数
-307)