心の中で、言えるようになりたいと強く思っています。子どもの心の中の気持ちを見続けます。

4×1=2しいちがし4×2=8しにがはち4×3=12しさんじゅうに4×4=16ししじゅうろく

4×5=20しごにじゅう4×6=24しろくにじゅうし4×7=28ししちにじゅうはち4×8=32しはさんじゅうに4×9=36しくさんじゅうろく

4の段を覚えようとしています。

 

ですが、

思うように覚えることができなくて、

涙がこぼれています。

 

とても静かな泣き方です。

ただ涙がこぼれていて、

それをそっと拭うような泣き方です。

 

「4の段を言えるようになりたい」と、

この子は強く思っています。

 

だから、

このような静かな泣き方をしています。

 

泣いていることに

気持ちがないのです。

涙が勝手に出ています。

 

4の段を言えるようになることに、

気持ちを集中させています。

 

子どもの気持ちを見ようとすると、

見ることができます。

 

気持ちに形はありません。

でも、見ることはできます。

 

気持ちを向けている対象と

一組に見ます。

 

この子は、

悲しくて「泣く」に

気持ちを向けていません。

 

「4の段を言えるようになること」に

気持を強く向けています。

悔しい気持ちです。

 

子どもの気持ちとその対象を

見ようとしなければ、

気持ちも対象も見えません。

 

泣いていることを

見てしまいます。

 

そして、

「泣く」ことに気持ちを向けていない子どもに、

「泣かない」や「涙を拭いて」のような

的外れなことを言ってしまいます。

 

この子は、

「4の段を言えるようになりたい」と

強く思っていますが、

思うように4の段を覚えることができません。

 

覚えられないことに悔しさを感じます。

涙が勝手にこぼれています。

 

手伝うこちらも、

子どもが泣いていることを気にしません。

 

子どもが泣いていることを

気にしていないのですから、

手伝うこちらも気にしません。

 

子どもの

「4の段を言えるようになりたい」気持ちを

手伝います。

 

言えるようになることだけに絞って、

手伝います。

 

この子は、

九九の覚え方を知っています。

 

振り仮名の付いた4の段のカードを、

「速く読む」と

「見ないで言う」を繰り返す覚え方です。

 

効果的な覚え方です。

覚えられるはずです。

 

でもまだ、

4の段をすべて、

スラスラと暗唱できません。

思い出せない九九があります。

 

九九のカードを見て

速く読むことに戻ります。

思い出せない九九を

覚えようとして読みます。

 

そして、

九九のカードを見ないで、

暗唱します。

 

こちらは、

努力しているこの子を、

ただ黙って見守ります。

 

見守って聞いているこちらの気持ちを、

「スラスラと4の段を暗唱できた」に

固定します。

 

目の前の子どもではありません。

少しだけ未来の子どもです。

 

目の前の子どもは、

涙がこぼれるだけの静かな泣き方です。

 

ポタポタではなくて、

時々ポタリ程度です。

泣き声もありません。

鼻水をすすり上げません。

 

それでも、

4の段を暗唱する声は、

かすれています。

声が震えているように

聞こえます。

 

時々、

こぼれ落ちる涙が見えます。

かすれて震えている声が聞こえます。

 

ですが、

この子のそのようなことと無関係に、

「スラスラと4の段を暗唱できた」子どもを、

心にイメージして見守ります。

 

思い出せない九九に、

子どもが振り回されないように

手伝います。

 

「しろく(4×6)」を思い出せなければ、

「にじゅうし(24)」と、

穏やかに教えます。

 

こちらが、

九九のカードになって教えます。

 

こうすることで子どもは、

思い出せない九九に

振り回されることがなくなります。

 

この子は、

「4の段を言えるようになりたい」という気持ちを

持ち続けることができます。

 

じきに言えるようになります。

 

参照:

蔵一二三、「計算の教えない教え方 かけ算わり算」(2018)。

アマゾン。

計算の教えない教え方 かけ算わり算―たかが計算 されど算数の根っこ そして人育て