3+8 を見ただけで、
答え11が頭に浮かぶ感覚を、
子どもは何回も、
持っては手放します。
3+8 の3を「さん」と黙読して、
「し、ご、ろく、しち、はち、く、じゅう、じゅういち」と、
指で8回数えて、
答え11を出します。
この子がある日、
3+8 を見たらすぐ、
答え11が頭に浮かんでいることを体験します。
「まただ」と思います。
既に、何回も同じようなことを体験しています。
7+5 の答え12が、
頭に浮かぶこともありましたが、
じきに消えています。
6+4 の答え10や、
9+5 の答え14が、
頭に浮かぶこともありましたが、
やはりじきに、消えています。
安定しません。
じきに消えてしまいます。
たし算の感覚が消えてしまうことに、
子どもは慣れています。
でもこちらは、たし算の感覚が消えません。
3+8 を見たらすぐ、
答え11がいつでも頭に浮かびます。
たし算の感覚が消えないようになるまで、
安定していつでも使えるようになるまで、
持っては手放すことを繰り返したからです。
そうだったのですが、
持っては手放したことを忘れています。
だから、たし算の感覚を持った後、
消えてしまうことが理解できません。
3+8 の答え11を
頭に浮かべる感覚を持った後、
子どもが手放してしまったことに、
こちらは驚いてしまいます。
そして、「どうしたの」、
「できるでしょ」、
「3+8 の答えが出るでしょ」と、
うろたえてしまいます。
たし算の感覚は、
何回も持っては手放すことを繰り返した後、
持ったままで安定するものです。
目の前の子どもは、
安定する前の不安定さです。
たし算の感覚を持っては手放すことを
繰り返しているだけです。
3+8 でたし算の感覚が消えていたら、
子どもは消えることに慣れていますから、
3を「さん」と黙読して、
「し、ご、ろく、しち、はち、く、じゅう、じゅういち」と、
指で8回数えて、
答え11を出します。
ただそれだけです。
参照:
蔵一二三、「計算の教えない教え方 たし算ひき算」(2018)。
アマゾン。
計算の教えない教え方 たし算ひき算―たかが計算 されど算数の根っこ そして人育て