筆算のかけ算で繰り上がり数を、横棒の下に書きます。書く位置を横棒の上に変えさせます。

 {\normalsize { \begin{array}{rr} 85 \\ \times \:\:\:\:\:\: 7 \\ \hline \end{array} }}\\ の筆算のかけ算で、

7×5=35 の繰り上がり数3を書きます。

 

こうなった理由はあるのでしょう。

 

理由が何であろうとも、

繰り上がり数を書くことで、

繰り上がりのたし算を計算できます。

 

この子に、合っています。

 

計算できているのですから、

繰り上がり数を書くことを止めません。

 

繰り上がり数を書かないように変えさせると、

計算できなくなる危険があります。

 

「書くのをやめる」や、

「頭で覚えて」のように教えて、

繰り上がり数を書かずに計算させようとしても、

子どもに受け入れてもらえません。

 

「なるほど」と子どもは思いません。

「どうして?」と疑問になります。

「計算できているのに」と不満を感じます。

 

この子は、

筆算のかけ算の横棒(――)の下に、

繰り上がり数3を書きます。

 

 {\normalsize { \begin{array}{rr} 85 \\ \times \:\:\:\:\:\: 7 \\ \hline \:\:\:\:\:^{3}5\end{array} }}\\ のように、

やや小さめの数字です。

 

ですが、横棒(――)の下は、

筆算のかけ算の答えを書きます。

 

このままでは、

繰り上がり数と答えの区別ができなくなります。

 

繰り上がり数3を書く場所が悪いのです。

 

この子は、繰り上がり数を書いて計算します。

書くことに慣れています。

書くことが計算の一部になっています。

 

だから、書くことを認めます。

そして、書く場所だけを変えさせます。

 

横棒の上に書くように変えます。

 

「棒の上に書く」とだけ教えます。

下から上です。

 

 {\normalsize { \begin{array}{rr} 85 \\ \times \:\:\:\:\:\: _{3}7 \\ \hline \:\:\:\:\:5\end{array} }}\\ です。

 

「書いてもいいけれどね、場所が悪い」、

「答えと区別できなくなる」、

「ここに変える」のように教えません。

 

理由を教えても、動きがありません。

「棒の上に書く」と、

子どもが動くことのみを伝えます。

 

すると子どもも、動いてくれます。

 

そうですが、

もっと気の利いた何かを

教えたくなります。

 

「棒の下に書くと、答えなのか、

繰り上がり数なのか区別がつかなくなる」、

「棒の下は答えだけを書くようにする」、

「答えと繰り上がり数が混ざらなくなる」、

「だから、棒の上に

繰り上がり数を書くようにしてほしい」のように、

長い説明になるのが普通です。

 

子どもは動きで学びます。

長い説明の中に、動きが隠れてしまいます。

何をどうしたらよいのか分からなくなります。

 

「棒の上に書く」や、

「これ、ここ」のように、

してほしいことだけを教えられると、

動きがよく分かります。

 

「これ、ここ」の「これ」は、

棒の下に書いてある繰り上がり数3を

示してから言います。

 

「これ、ここ」の「ここ」は、

棒の上の余白を示して言います。

 

示されることで、

子どもに分かりやすい言い方になります。

 

子どもは繰り上がり数3を、

素直に棒の上に書き換えます。

 

繰り上がり数を棒の上に書いてほしい理由や

目的を言いません。

 

理由や目的に、

動きがないからです。

 

何をどうするのかの動きを知りたいのです。

動きのない説明は、聞いてもらえません。

 

何をどうするのかの動きだけを伝えます。

繰り上がり数3を示しながら、

「これ、ここ」とだけ教えます。

 

こうするとすぐに、動いてくれます。

 

子どもが動きますから、

こちらは、「そうそう」と

独り言のようにつぶやいて、

動きを受け止めます。

 

繰り上がり数を書くことから、

頭に覚えて計算することに、

そのうち変わってほしいのです。

 

そうですが、

棒の下に繰り上がり数を書くことをやめさせて、

頭に覚えさせるようにすると、

変化が大きすぎます。

 

子どもが動きを変えようとしても、

難しすぎてできなくなります。

 

繰り上がり数を書くことを認めて、

書く位置だけを、

下から上に動かすだけですから、

子どもはすぐにしてくれます。

 

参照:

蔵一二三、「計算の教えない教え方 かけ算わり算」(2018)。

アマゾン。

計算の教えない教え方 かけ算わり算―たかが計算 されど算数の根っこ そして人育て