子どもの「分からない」を、「計算して、答えを出したいから、答えの出し方を教えて・・」のように聴いて、こちらが、「答えの出し方」をやって見せます。こうすると、子どもに信頼されて、何回でも、聞いてくれます。

算数や数学の計算の仕方を教えるとき、

子どもを理解することだけを目的としている

理解目的の聴き方を、

まれにしか見ることがないようです。

 

普通に見るのは、

教えようとしている話し方ですから、

子どもの話を聴いているときも、

聴いているのではなくて、

心の中で、

教える準備、

つまり、話す準備をしています。

 

理解するだけの聴き方を、

教育の現場で見ることは、

本当にまれです。

 

ですが、

子どもを

理解目的で聴くことができれば、

子どもの計算力を育てることも、

子ども自身を育てることもできます。

 

実際のところ、

こちらが子どもを育てるのではなくて、

子どもが、

子ども自身を育てています。

 

子どもが、

自分を育てる手伝いをしているだけですから、

子どもの話を、

理解目的で聴くことは、

実は、

とても重要です。

 

こういうことですから、

理解するだけの聴き方を、

子どもに試す価値があります。

 

 

例えば、

 {\Large\frac{1}{8}} {\Large\frac{7}{8}}= の分数のたし算を、

子どもから、

「分からない」と聞かれるようなときです。

 

子どものことを、

理解するためだけに聴こうとすれば、

「計算して、答えを出したいから、

答えの出し方を教えて・・」のような感じで、

聴くことでしょう。

 

 

このように、

子どもの「分からない」を、

聴くことができれば、

「計算して、答えを出すことだけ」を、

この子に、

教えようとします。

 

「教える」では、

正しく伝わらないでしょう。

 

「答えの出し方」を、

こちらがやって見せる・・のような感じです。

 

こうすれば、

「計算して、答えを出したいから、

答えの出し方を教えて・・」と、

子どもを理解したことと、

整合性が取れます。

 

 

以下は、

やって見せる「答えの出し方」の一例です。

 

 {\Large\frac{1}{8}} {\Large\frac{7}{8}}= の = の右を示して、

「棒(-)」です。

 

こちらが、

「答えの出し方」を見せていると、

子どもはすぐに理解して、

 {\Large\frac{1}{8}} {\Large\frac{7}{8}} {\Large\frac{\:\:\:}{\:\:\:}} と書きます。

 

次に、

 {\Large\frac{1}{8}} {\Large\frac{7}{8}} {\Large\frac{\:\:\:}{\:\:\:}} の 2 つの 8 を、

順に示して、

(視線を向けて、同じであることを確かめて)、

(同一分母であることを確かめて)、

(通分されていることを確かめて)、

右の  {\Large\frac{\:\:\:}{\:\:\:}} の下を示して、

「8」です。

 

子どもが、

8 を書いて、

 {\Large\frac{1}{8}} {\Large\frac{7}{8}} {\Large\frac{\:\:\:}{8}} こうなります。

 

続いて、

 {\Large\frac{1}{8}} {\Large\frac{7}{8}} {\Large\frac{\:\:\:}{8}} の分子の 1 と 7 を、

順に示しながら、

「1+7=8」、

 {\Large\frac{\:\:\:}{8}} の上を示して、

「8」です。

 

やはり子どもは、

8 を書いて、

 {\Large\frac{1}{8}} {\Large\frac{7}{8}} {\Large\frac{8}{8}} こうなります。

 

それから、

 {\Large\frac{1}{8}} {\Large\frac{7}{8}} {\Large\frac{8}{8}} の答え  {\Large\frac{8}{8}}

上の 8 と、

下の 8 を示しながら、

「8÷8=1」、

 {\Large\frac{8}{8}} の右を示して、

「わ(=)」、

「1」です。

 

これで子どもは、

 {\Large\frac{1}{8}} {\Large\frac{7}{8}} {\Large\frac{8}{8}}=1 と書いて、

答えの出し方を理解します。

 

 

また、

同じ子から、

 {\Large\frac{5}{6}} {\Large\frac{5}{6}}= も、

「分からない」と聞かれます。

 

同じように、

子どもを理解して、

同じように、

こちらが、

「答えの出し方」をやって見せます。

 

詳細を省きますが、

 {\Large\frac{5}{6}} {\Large\frac{5}{6}} {\Large\frac{\:\:\:}{6}}

 {\Large\frac{5}{6}} {\Large\frac{5}{6}} {\Large\frac{10}{6}}

 {\Large\frac{5}{6}} {\Large\frac{5}{6}} {\Large\frac{10}{6}}=1 {\Large\frac{4}{6}}

 {\Large\frac{5}{6}} {\Large\frac{5}{6}} {\Large\frac{10}{6}}=1 {\Large\frac{4}{6}}=1 {\Large\frac{2}{3}} のように、

1 ステップずつを、

やって見せます。

 

もちろん、

 {\Large\frac{10}{6}}=1 {\Large\frac{4}{6}} の計算で、

「仮分数を帯分数に変える」や、

「分子を、分母で割る」のように、

言葉で説明しません。

 

これは、

「答えの出し方」をやって見せるのではなくて、

こちらが話して、

子どもに理解させようとしていますから、

子どもの希望、

「計算して、答えを出したいから、

答えの出し方を教えて・・」を満たせません。

 

子どもが、

計算の仕方を理解する手助けの積りでも、

子どもの話を理解目的で、

聴いていないことになって、

おかしな話ですが、

子どもを、

ガッカリとさせます。

 

同じ子から、

さらに、

 {\Large\frac{7}{9}} {\Large\frac{5}{9}}= も、

「分からない」と聞かれます。

 

こちらが、

「答えの出し方」をやって見せます。

 

詳細を省きますが、

 {\Large\frac{7}{9}} {\Large\frac{5}{9}} {\Large\frac{\:\:\:}{9}}

 {\Large\frac{7}{9}} {\Large\frac{5}{9}} {\Large\frac{12}{9}}

 {\Large\frac{7}{9}} {\Large\frac{5}{9}} {\Large\frac{12}{9}}=1 {\Large\frac{3}{9}}

 {\Large\frac{7}{9}} {\Large\frac{5}{9}} {\Large\frac{12}{9}}=1 {\Large\frac{3}{9}}=1 {\Large\frac{1}{3}} のように、

1 ステップずつを、

やって見せます。

 

「えっ、これもなの?」、

「もう、できるでしょ・・」、

「やってみたら・・」とは、

しないように注意します。

 

こうしてしまうと、

「答えの出し方」ではありませんし、

子どもの希望、

「計算して、答えを出したいから、

答えの出し方を教えて・・」を満たせません。

 

 

このように、

子どもの話 : 「分からない」を、

理解目的で聴いて、

「計算して、答えを出したいから、

答えの出し方を教えて・・」と理解して、

「答えの出し方」をやって見せるから、

子どもは、

何回でも、

聞いてくれます。

 

実は、

子どもは、

聞くことが嫌いです。

 

「答えの出し方」から離れて、

少しでも、

何かを教えようとすると、

次から、

子どもは聞くことをやめます。

 

(基本  {\normalsize {α}} -481)、(分数  {\normalsize {α}} -197)